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影踏み

原作 横山秀夫 × 監督 篠原哲雄 × 出演 山崎まさよし

孤高の泥棒(ダークヒーロー)が事件を解き明かす、《異色》の犯罪ミステリー

真実を盗み出せ。

大ヒット上映中!

山崎まさよし 尾野真千子 北村匠海 中村ゆり 竹原ピストル 中尾明慶 藤野涼子 下條アトム 根岸季衣 大石吾朗 高田里穂 真田麻垂美 田中要次 滝藤賢一 鶴見辰吾/大竹しのぶ 監督:篠原哲雄 脚本:菅野友恵 原作:横山秀夫(祥伝社文庫)音楽:山崎将義 主題歌:「影踏み」山崎まさよし(EMI Records)

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TRAILER

    消せない〈過去〉と、傷ついた〈心〉を背負い 孤高の泥棒(ダークヒーロー)が真実を解き明かす!

    個人と組織の葛藤をリアルに描き、幅広い読者から絶大な支持を得ている日本ミステリー界の巨匠、横山秀夫。
    「半落ち」「クライマーズ・ハイ」「64-ロクヨン-」など、大部分の作品が映画やドラマ化されるなか、その特異な小説技法ゆえに長らく映像化不可能とされてきた“最後の一作”が「影踏み」(祥伝社文庫)だ。
    警察内の人間模様に主眼を置いた横山作品で、泥棒という犯罪者を主人公にした唯一の例外。
    まさにファン待望の異色作が、ついにスクリーンに登場する。

    圧倒的な存在感で主人公・真壁修一を演じたのは、日本の音楽シーンで不動の位置を占めるシンガーソングライター、山崎まさよし。難しい素材を鮮やかに映像化したのは、日本映画界の重鎮・篠原哲雄監督。青春映画のマスターピース『月とキャベツ』(1996)の名コンビがふたたびタッグを組み、同じ群馬県を舞台に、今度は「ハードボイルドにしてハートウォーミング」という新境地を拓いた。さらに尾野真千子、北村匠海、滝藤賢一、鶴見辰吾、大竹しのぶなど、邦画界を代表する演技派が集結。原作のクライム・サスペンス要素に映画ならではの大胆な表現も加え、一級のヒューマン・エンタテインメントが誕生した。

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    STORY

    世間のルールを外れ、プロの窃盗犯として生きてきた真壁修一(山崎まさよし)。ただの「空き巣」とは違う。深夜に人のいる住宅に忍び込み、現金を持ち去る凄腕の「ノビ師」だ。証拠も残さず、取り調べにも決して口を割らない。高く強固な壁を思わせるそのしたたかさで、地元警察からは「ノビカベ」の異名で呼ばれていた。ある夜、真壁は偶然侵入した寝室で、就寝中の夫に火を放とうとする妻の姿を目にする。

    そして彼女を止めた直後に、幼なじみの刑事・吉川聡介(竹原ピストル)に逮捕されてしまう。2年後、刑期を終え出所した真壁は、彼を「修兄ィ」と慕う若者・啓二(北村匠海)と共に、気がかりだった疑問について調べ始める。なぜあの夜、自分は警察に補捉されてい たのか。そして、あのとき夫を殺そうとしていた葉子(中村ゆり)という女の行方は?恋仲の久子(尾野真千子)が懸命に止めるのを振り切り、自らの流儀で真実に迫っていく真壁。裏社会を結ぶ細い線が見えてきた矢先、新たな事件が起こって……。

    CAST

    • 山崎まさよし 真壁修一 PROFILE
    • 尾野真千子 安西久子 PROFILE
    • 北村匠海 啓二 PROFILE
    • 滝藤賢一 久能次朗 PROFILE
    • 鶴見辰吾 馬淵昭信 PROFILE
    • 大竹しのぶ 真壁直美 PROFILE
    • 中村ゆり 葉子 PROFILE
    • 竹原ピストル 吉川聡介 PROFILE
    • 中尾明慶 大室誠 PROFILE
    • 藤野涼子 回想の安西久子 PROFILE
    • 下條アトム 栗本三樹男 PROFILE
    • 根岸季衣 菅原春江 PROFILE
    • 真田麻垂美 図書館にいた女 PROFILE
    • 田中要次 加藤 PROFILE

    真壁修一

    山崎まさよし

    1971年12月23日生まれ。山口県出身。1992年にRCサクセションの「トランジスタ・ラジオ」のカバーシングルでデビューし、95年の「月明かりに照らされて」でメジャーデビュー。近年の作品にアルバム「LIFE」(16)、弦楽四重奏と行ったツアーの様子を収録したDVD「String Quartet“BANQUET”」(19)などがある。また96年には篠原哲雄監督の映画『月とキャベツ』に初主演し、映画の主題歌となった「One more time, One more chance」が大ヒット。俳優としても注目を集める。主な出演作に、ドラマ『奇跡の人』(98・日本テレビ系)、映画『黒い家』(99)、劇中の音楽も手掛けた主演作『8月のクリスマス』(05)など。篠原哲雄監督とは『月とキャベツ』に続き、ショートフィルムのオムニバス映画『Jam Films』の一編『けん玉』でもタッグを組んだ。

    安西久子

    尾野真千子

    1981年11月4日生まれ。奈良県出身。1996年、河瀨直美監督の映画『萌の朱雀』でデビュー。連続テレビ小説『カーネーション』(11~12)でコシノ三姉妹の母をモデルにした小原糸子役で朝ドラヒロインを演じ、数々の女優賞を受賞。近年のドラマの出演に『この世界の片隅に』(18・TBS系)、『絶叫』(19・WOWOW)、『令和元年版 怪談牡丹燈籠』(19・10月放送予定・NHK)など。主な映画の出演に『殯の森』(07)、横山秀夫原作の『クライマーズ・ハイ』(08)、『そして父になる』(13)、『いつまた、君と〜何日君再来〜』(17)、『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17)、『素敵なダイナマイトスキャンダル』(18)などがある。

    啓二

    北村匠海

    1997年11月3日生まれ。東京都出身。2008年『DIVE!』で映画デビュー。18年には、ドラマ『鈴木先生』(11・テレビ東京系)で共演した土屋太鳳と「TAOTAK」を結成。土屋と共演した映画『春待つ僕ら』(18)の主題歌を担当する。近年のドラマの出演に『隣の家族は青く見える』(18・フジテレビ系)、『グッドワイフ』(19・TBS系)など。主な映画の出演に『君の膵臓をたべたい』、『勝手にふるえてろ』(ともに17)、『スマホを落としただけなのに』(18)、『君は月夜に光り輝く』(19)がある。西加奈子原作の映画『さくら』などが公開待機中。また、ダンスロックバンド「DISH//」のメンバーでもある。

    久能次朗

    滝藤賢一

    1976年11月2日生まれ。愛知県出身。舞台を中心に活躍後、08年、横山秀夫原作・原田眞人監督の映画『クライマーズ・ハイ』に出演。13年のドラマ『半沢直樹』(TBS系)でも印象的な演技を見せる。近年の主な出演作に映画『64-ロクヨン-(前編・後編)』(16)、『関ケ原』(17)、『孤狼の血』、『虹色デイズ』(ともに18年)、ドラマ『重版出来!』(16・TBS系)、『貴族探偵』(17・フジテレビ系)、『半分、青い。』(18・NHK)、『探偵が早すぎる』(18・日本テレビ系)など。映画『決算!忠臣蔵』が公開待機中のほか、2020年の大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)では足利義昭役を演じる。

    馬淵昭信

    鶴見辰吾

    1964年12月29日生まれ。東京都出身。1977年に俳優デビューし、79年に放送を開始した『3年B組金八先生』の宮沢保役で注目を集める。80年には相米慎二監督の映画『翔んだカップル』に出演し、その後数々の映画やドラマで活躍。近年の映画出演に『シン・ゴジラ』、『密偵』、『太陽』(すべて16)、『日日是好日』(18)、『マスカレード・ホテル』、『きばいやんせ!私』『惡の華』(ともに19)などがある。また『チコちゃんに叱られる』(NHK総合)の再現ドラマシーンにも出演中。篠原哲雄監督作品への出演は『月とキャベツ』(96)、『ばぁちゃんロード』(18)がある。

    真壁直美

    大竹しのぶ

    1957年7月17日生まれ。東京都出身。1975年 映画「青春の門 -筑豊編-」ヒロイン役で本格的デビュー。同年の連続テレビ小説『水色の時』に出演。以降、女優として圧倒的な存在感を常に注目を集め、映画やドラマのほか、野田秀樹や蜷川幸雄、松尾スズキ、栗山民也ら数々の名演出家の舞台にも出演。近年の映画の出演作に、『海街diary』(15)、『後妻業の女』(16)、『のみとり侍』(18)など。宮崎駿監督の『風立ちぬ』(13)の声優や、『インサイド・ヘッド』(15)の日本語吹き替えなども担当。大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)に出演。

    葉子

    中村ゆり

    大阪府出身。2007年、映画『パッチギ!LOVE&PEACE』にヒロイン・キョンジャ役で出演し、全国映連賞女優賞、第3回大阪シネマフェスティバル新人賞を受賞するなど高い評価を受ける。近年のドラマ出演作に連続テレビ小説『わろてんか』(17~18・NHK)、『フルーツ宅配便』(19・テレビ東京系)、『パーフェクトワールド』(19・フジテレビ系)、『ポイズンドーター・ホーリーマザー』(19・WOWOW)など。映画の出演に『ディアー・ディアー』(15)、『8年越しの花嫁 奇跡の実話』(17)、『愛唄-約束のナクヒト-』(19)、『影に抱かれて眠れ』(19)などがある。

    吉川聡介

    竹原ピストル

    1976年12月27日生まれ。千葉県出身。1999年、「野狐禅」を結成し、03年に「自殺志願者が線路に飛び込むスピード」でメジャーデビュー。06年に映画『青春☆金属バット』に主演し、俳優としての活動も開始する。09年に「野狐禅」を解散し、インディーズでソロ活動を開始。17年には『NHK紅白歌合戦』に初出場を果たした。映画の出演作は、『さや侍』(11)、『私の男』(14)など。16年、西川美和監督の映画『永い言い訳』に出演し、キネマ旬報ベスト・テンの助演男優賞するなど高い評価を受けた。ドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズ(17、18)には本人役で出演し、エンディングテーマも担当。

    大室誠

    中尾明慶

    1988年6月30日生まれ。東京都出身。ドラマ『3年B組金八先生』(01・TBS系)でデビューし、以後『GOOD LUCK‼』(03・TBS系)、『WATER BOYS2』(05・フジテレビ系)、映画化もされたドラマ『ROOKIES』(08・TBS系)などに出演。13年に女優の仲里依紗と結婚。現在一児の父でもある。近年のドラマの出演作に、Netflix オリジナルドラマ『Jimmy 〜アホみたいなホンマの話〜』(18)、連続テレビ小説『まんぷく』(18~19)、『監察医 朝顔』(19・フジテレビ系)など。テレビ東京・BSジャパンで放送中の『SUPER GT+』(11~・テレビ東京系)では放送当時からメインMCを務めており、芸能界随一の車好きとしても知られる。

    回想の安西久子

    藤野涼子

    2000年2月2日生まれ。神奈川県出身。宮部みゆき原作、成島出監督の映画『ソロモンの偽証』(15)で約1万人が参加した主人公・藤野涼子役のオーディションを見事勝ち抜き、役と同じ芸名でデビュー。同作で日本アカデミー賞新人俳優賞ほか、数々の映画賞を受賞する。主な出演作に、映画『クリーピー 偽りの隣人』(16)、『輪違屋糸里~京女たちの幕末~』(18)、連続テレビ小説『ひよっこ』(17、19・NHK)、『腐女子、うっかりゲイに告る。』(19・NHK)などがある。Netflixの『深夜食堂 Tokyo Stories Season2』(19)に出演するほか、朝倉あきと共演の二兎社公演『私たちは何も知らない』永井愛 演出(19・11月~)も上演予定。

    栗本三樹男

    下條アトム

    1946年11月26日生まれ。東京都出身。連続テレビ小説『信子とおばあちゃん』(69)でドラマデビュー。映画やドラマで俳優として活躍する傍ら、ドラマ『刑事スタスキー&ハッチ』(77~81・TBS系)のスタスキー役や、映画『48時間』などのエディ・マーフィの吹き替え、『世界ウルルン滞在記』(95~07・TBS系)のナレーションなどを担当。近年の出演作に、ドラマ『ちびまる子ちゃん』(06・フジテレビ系)、『不毛地帯』(10・フジテレビ系)、『遺留捜査』(17・テレビ朝日系)、映画『ゴーヤーちゃんぷるー』(05)、『龍三と七人の子分たち』(15)など。篠原哲雄監督作は『つむじ風食堂の夜』(09)に出演。

    菅原春江

    根岸季衣

    東京都出身。劇団つかこうへい事務所で舞台『ストリッパー物語』(75)の主演を務め、『復讐するは我にあり』(79)『野獣死すべし』(80)『時をかける少女』(83)などの話題作に次々出演する。大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』(19)には、阿部サダヲ演じる田畑政治の母・うら役で出演。10月には瀬々敬久監督の『楽園』が、11月には平山秀幸監督の『閉鎖病棟~それぞれの朝』が公開。篠原哲雄監督作への出演には『命』(02)、『天国の本屋~恋火』(04)、『種まく旅人 くにうみの郷』(15)がある。

    図書館にいた女

    真田麻垂美

    1977年8月1日生まれ。神奈川県出身。アン・ソンギと役所広司が共演した映画『眠る男』(96)で女優デビュー。翌年、篠原哲雄監督の『月とキャベツ』にヒロインのヒバナ役で出演。その後、連続テレビ小説『ひまわり』(96・NHK)やドラマ『いちばん大切な人』(97・TBS系)、『ボーイハント』(98・フジテレビ系)、映画『しあわせになろうね』(98)、『Blister ブリスター!』(00)、『忘れられぬ人々』(01)など数々の作品に出演するが、一度女優業を休業。17年、ユン・ソクホ監督のラブストーリー『心に吹く風』のヒロイン役で女優復帰した。篠原監督作への出演は、『きみのためにできること』(99)に続き3作目となる。

    加藤

    田中要次

    1963年8月8日生まれ。長野県出身。
    1989年山川直人監督「SEEK AND FIND」でデビュー。竹中直人監督の映画『無能の人』(91)にスタッフとして参加しながら出演し、その後、俳優業に専念して様々な映画やドラマに出演するようになる。96年には篠原哲雄監督の『月とキャベツ』で山崎まさよしと共演。2001年のドラマ『HERO』で注目を集める。17年には『蠱毒 ミートボールマシン』で映画初主演。近年の出演作として、『家路』、『愛しのアイリーン』など。公開待機作は、『逆位置のバラッド』、『楽園』などがある。篠原哲雄監督作は、『はつ恋』(00)、『つむじ風食堂の夜』(09)に続き、4作目。

    STAFF

    監督:篠原哲雄

    1962年2月9日生まれ。東京都出身。明治大学法学部卒。その後、助監督として森田芳光、金子修介、根岸吉太郎監督作品などに就く傍ら、自主制作も開始。1989年に8ミリ『RUNNING HIGH』がPFF89特別賞を受賞。1993年に16ミリ『草の上の仕事』が神戸国際インディペンデント映画祭でグランプリ受賞。国内外の映画祭を経て劇場公開となる。山崎まさよしが主演した初長編『月とキャベツ』(96)がヒット。その後、『洗濯機は俺にまかせろ』(99)、『はつ恋』(00)、『命』『木曜組曲』(ともに02)、『昭和歌謡大全集』(03)、『深呼吸の必要』『天国の本屋~恋火』(ともに04)、『地下鉄(メトロ)に乗って』(06)など多彩な作品を手がける。近年の監督作品に野村萬斎主演の『花戦さ』(17)、いくえみ綾原作の『プリンシパル~恋する私はヒロインですか?~』(18)、文音&草笛光子が主演した『ばぁちゃんロード』(19)など。『月とキャベツ』のスタッフが再結集して制作した『君から目が離せない Eyes On You』(19)では、山崎まさよしが主題歌を提供した。

    原作:
    横山秀夫
    「影踏み」(祥伝社文庫)

    1957年1月17日生まれ。東京都出身。大学卒業後、上毛新聞社で12年間記者として勤務。1991年『ルパンの消息』でサントリーミステリー大賞佳作を受賞し、新聞社を退社。その後、フリーライターなどを経て、98年の『陰の季節』で小説家デビュー。02年に発表された『半落ち』や、『クライマーズ・ハイ』(03)、英国推理作家協会の翻訳部門の最終候補作にもなった『64(ロクヨン)』(12)は、異なった俳優を主演に据えて映画版とドラマ版が制作され、それぞれ高い評価を受けた。ほか、『出口のない海』(96)が映画化、『顔』(02)や『震度0』、『ルパンの消息』(ともに05)などがドラマ化されたほか、『陰の季節』シリーズや『第三の時効』シリーズ(ともにTBS系)、『臨場』シリーズ(テレビ朝日系/12年には映画化)など、ドラマでもシリーズ化され愛されている作品が多数。

    INTERVIEW

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    監督 篠原哲雄インタビュー

    ─原作者・横山秀夫さんとの出会いについて教えてください。

    最初にお会いしたのは「伊参スタジオ映画祭」です。これは群馬県中之条町の廃校を改装した伊参(いさま)スタジオで毎年開催されている、手作りの映画祭。この地でロケ撮影をしたご縁で、僕の長編デビュー作『月とキャベツ』(1996年)を毎年上映してくれています。横山さんとはここが主催するシナリオコンクールの審査員として、2013年から15年までご一緒しました。群馬出身の横山さんは、映画人とはまた違うミステリー作家としての視点で、応募作を丁寧に読んでくださった。ときには率直に意見をぶつけ合ったりもしつつ(笑)。僕としては大変面白く、勉強になった3年間でした。

    ─なぜ山崎まさよしさん主演で「影踏み」を映画化することに?

    実はこれも、同じ映画祭がきっかけなんです。2016年、『月とキャベツ』の公開20周年を記念して、山崎さんがミニ・コンサートを開きました。同じ会場に『64-ロクヨン-』(2016年)の横山さんがゲストとして招かれていて、まずこの2人が控え室で意気投合した。実は山ちゃんは大の横山ファンで、刊行された全作品を読んでいたんですね。「横山秀夫原作の映画を、山崎まさよし主演で」という話は自然にでてきた話。後日、横山さんの方から、まだ映像化されていなかった「影踏み」の名前が挙がり、山崎さんとも伊参とも縁の深い僕に監督の依頼が回ってきたと(笑)。はなはだ簡単ですが、ざっくり言うとそういう流れだと思います。

    ─原作を読んで、最初どのような印象を抱かれましたか?

    非常に映画的な題材、面白くなると感じました。横山さんの原作では珍しい警察内の話ではなく、アンダーグラウンドの社会を生きてきたプロの泥棒が主人公になっている。この設定が非常にユニークですし、山崎さん本人が持っている無骨でちょっと不器用なイメージにもぴったりだと思いました。『月とキャベツ』から20年経ち、僕としてもまた、山崎さんと組んで新しい映画を作りたいと考えていた。せっかく一緒に作るなら、前と同じでない切り口が必要だと。その点「影踏み」という原作は、彼の違う表情を引き出してくれるんじゃないかと。

    ─『月とキャベツ』のコンビに横山さんの原作が掛け合わされることで、新たなケミストリーを生み出せるのではないかと。

    そうですね。と同時に「影踏み」という小説には、どこか『月とキャベツ』を想起させる要素も含まれているんです。横山さんが言う「この小説最大の特徴であるファンタジー的な設定」。ネタバレになるので、詳しくは作品を観ていただきたいのですが……。要は「この世から消えゆく存在を、映像的にどう伝えるか」という主題と言っていい。実はこれ、僕にとってはわりと思い入れのあるテーマで。デビュー作の『月とキャベツ』以来、折に触れていろんな手法を重ねてきました。そういった想像力を刺激されたのもまた、この連作短編に惹かれた理由の一つだったかもしれません。

    ─撮影にあたって、何か意識したトーンはあったのでしょうか?

    何と言っても今回は「ノビ師」という忍びのプロが活躍するクライム・サスペンスですからね。やはりある種のノワールっぽさというか、ダークで影の多い仕上がりは目指していました。たとえば象徴的なのが、冒頭近くのタイトルバック。逮捕されて取り調べを受ける主人公・真壁修一を正面から捉えたアップのショットです。人物の顔に影が差して半分がシャドウに沈んでいく。この撮り方は事前に構想していましたが、現場で山崎さんの芝居を見て出来ると確信しました。刑事役の竹原ピストルさんと対峙した山崎さんの面構えが犯罪者然として板についていたので(笑)。他にも自転車を押しながら夜道を歩いたり、狙った住宅に忍び込んだり、全体的にかなり暗めのトーンを意識的に多く作った。その撮影と照明のバランスもまた、一つポイントでしたね。

    ─久々にタッグを組んだ山崎さんには、どのような演出を?

    まずは横山さん流の「官と民」の民の、さらにアウトローである人物を演じるという点で最初に会った記者会見時での話し合いで共通言語みたいなものは出来ているから、個々の芝居について事前に突き詰める事はしなかった。北村くんと尾野さんとのリハーサルをしたくらい。自由に演じていれば自然にキャラクターが滲み出てくる役ではないので、そこは大変だったと思う。細かな台詞回しにも気を配らざるを得なかった。 『月とキャベツ』では花火という名前のミュージシャンとして現場にいてくれてよかった。役柄として演技はしやすかったと思うし、彼のチャーミングな側面、等身大の人間性みたいなものを汲み取りやすかった。でも今回は犯罪者の役であり、完全にフィクションの人物像を造らなければいけなかった。しかもある種の“捜索者”として自分の身に降りかかった事件を解明し、その過程を通じて自らの過去とも向き合うことになるので……。

    ─存在感だけでなく、俳優としてのスキルが求められたと。

    実際、かなり長い台詞も多かったですからね。それを明確に言わないと、観客には込み入った事件の内容が伝わらない。シーンによっては何度もやり直したり、山崎さんも随分苦労していました。久々に会った会見の時「僕は俳優じゃないですから」とか言いながら(笑)、自分が何を求められているかは分かっている。北村匠海君、尾野真千子さん、滝藤賢一さん、鶴見辰吾さんなど共演者と四つに組みながらそこで生まれた空気感を大切にした。計算された精微な芝居とは違うけれど、山崎さんの佇まいは生かしたままノビカベという人格が立ち上がってきた。僕は彼の自然体なところは信頼していますし、共演の方々とのセッションでさらに新しい面も出てきたのでそこは監督としての狙い通りでもありました。

    ─完成した作品を振り返ってみて、手応えはいかがですか?

    いいに決まってます(笑)。目の前の事件と過去の事件が交差するストレートな犯罪ものとしても楽しんでいただけますし、複雑な人間関係を通して、不思議なファンタジーにもなったし恋愛映画でもある。『月とキャベツ』は今も多くのファンに支えられている幸せな作品ですが、山崎さんと一緒にその先の一歩を踏み出せた実感が確実にあります。それが何より嬉しいですね。

    山崎まさよし インタビュー

    ─14年ぶりの長編映画主演ですね。

    原作者の横山秀夫さんと「伊参スタジオ映画祭」で初めてお会いし、控え室でいろいろ盛り上がって……。気が付けばこんなことになっていました(笑)。自分でも不思議な縁だなと思います。僕はプロの俳優ではありません。過去に何本か出演作はありますが、たとえば自力でオーディションを勝ち抜いて力を付けてきた役者さんとは違う。今回のお話についても、本当は僕で大丈夫かなという気持ちの方が大きかった。でも『月とキャベツ』から一緒にやってきたシノさん(篠原哲雄監督)から「山ちゃん、ちょっとやってくれないかな」と言われたら、断る理由が見つからなかったのも事実なんですね。理屈ではなく「僕の身体でよかったら使ってください」と言ってしまう。自信も意気込みもないけれど、流れに乗ってみたというのが、正直なところです。

    ─もともと、横山秀夫さんの大ファンだったと伺いました。

    はい。お目に掛かる前から、刊行されたものは好きでぜんぶ読んでいました。横山さんの小説って、警察組織という究極の「官」を描きながら、弱い立場の人に目が向いているでしょう。いわゆる巨悪に立ち向かう捜査員より、むしろ陽の当たらない部署で働く人の葛藤だったり、彼らの人生を掘り下げることが多い。文章は硬質だけど、そういう眼差しは優しいと思うし。僕自身はずっと組織に属さずに生きてきたので、警察という集団内で生まれる軋轢とか力学をリアルに描きだす筆致が新鮮であり、痛快だったんですね。

    ─「影踏み」という作品にはどのような印象を?

    ノビ師という泥棒を描いた連作短編ですが、ストーリー全体を通じて主人公に寄り添うモチーフというか、象徴的な存在が出てくるでしょう。その仕掛けがすごくロマンチックだなと感じた記憶があります。だから「影踏み」を映画にすると伺った際には、小説ならではのアイデアをどうやって映像化するのかが個人的に楽しみでした。と同時に、真壁修一というこのキャラクターであれば自分にも合うんじゃないかなと。これもまた、ほんの少し思った。

    ─どうしてでしょう?

    シンプルに「官」ではなく「民」の主人公だから。たとえば刑事とか検察官の役を僕が演じるというのは、やっぱりリアリティーがないと思うんです。でも「影踏み」は、ずっと組織を描いてきた横山さんの作品で唯一、アウトローが活躍する小説ですし。同じ「民」でも医者や弁護士の役は絶対に無理だけど、泥棒ならいけるんじゃないかと(笑)。もちろん僕は、真夜中にこっそり人の家に忍び込んだ経験はありません。でも、仮に真壁修一という主人公を「自分の腕一本で生きてきた職人気質の男」と捉えるならば、その気持ちはミュージシャンである僕にも想像できなくはない。もちろん、もっと上手に演じられる俳優さんはたくさんいらっしゃると思うんですが……。役をお引き受けするにあたって、自分のなかでそう思えたのは大きかった気がします。

    ─撮影現場に入る前には、どのような準備をされましたか?

    住居に侵入するシーンや、取っ組み合うシーンがいくつかあったので、機敏に動ける身体は作っていきました。ただ、いわゆる役作りのようなことは基本、しなかった。演技のスキルがないのに事前に細かく作り込みすぎると、現場の芝居がかえってトゥーマッチになりそうで怖かったんです。一つ考えたのは、真壁を突き動かしている根本の感情かな。おそらく彼は、母親に対してずっとアンヴィバレントな気持ちを抱いていたと思うんです。もっとストレートに、憎しみと言ってもいい。本人も意識していない部分も含めて、すべての言動の根っこにそれがあったんじゃないか。そして盗みを働くことで、心に内包した情念を吐き出してたんじゃないかなと。実際に真壁を演じてみて、それは強く感じました。人間誰しも、何かしら過去の葛藤を抱えて生きてますもんね。

    ─篠原監督の演出はいかがでしたか?

    シノさんは基本、芝居を付けてくれないんですよ。『月とキャベツ』の頃から基本そうで、「監督、ここはどうしましょう?」「うーん……どうしたい?」みたいな会話の繰り返し。たぶんあれは監督としての技なんでしょうね。でも僕としては、プロの俳優さんの集団に、いきなり一人だけ素人が放り込まれた状況で。とにかく大変だった(笑)。その意味では、共演者の方々には本当に助けていただきました。とりわけ“相棒”の啓二を演じた北村(匠海)君。彼が空気を作ってくれたので何とかやれた部分は大きかったと思う。

    ─共演シーンが一番長かったですね。

    はい。若いのにすごく経験が豊富で、僕のちょっとした言葉や動作に対しても「あ、こんなふうに演るんだ!」というリアクションを細かく返してくれるんですね。ある意味僕は、そこに乗っかっていくだけで修一になれた。あらゆる場面で引っぱってもらいました。彼もバンド活動をしているので、撮休日には僕が持参したギターを彼が弾いたり、打ち上げではカラオケに行ったり……。いろいろ楽しかったです。北村君だけでなく、今回は俳優のすごさを実感する瞬間が多々ありました。久子を演じた尾野真千子さんは、普段はサバサバして明るいのに、カメラが回るとスッと電圧が落ちるように、ちょっと古風で薄幸そうな女性に変わる。逆に滝藤賢一さんは、スタートがかかると“バーン!”と電圧が跳ね上がる感じ(笑)。共演していて、投げ飛ばされるんじゃないかと怖かったくらいです。ああやってゼロから空気を立ち上げられるのは、改めてすごいと思う。僕は終始、そこに乗っかっていただけで……こういう座組みを作ってくれたシノさんや製作陣には、感謝しかありません。

    ─主演に加えて、今回は映画音楽も手がけています。

    ラッシュ映像を何度も観つつ、音楽を付けていきました。自分の下手な演技を繰り返し見るのは苦痛だったけれど(笑)。作業そのものはすごく楽しかったですね。サントラを作ることはあらかじめ決まっていたので、撮影中、真壁を演じながら思い付いたアイデアもいくつか入っています。その一つが、終盤のクライマックスで流れる楽曲に、男の子のソプラノ・ボイスを用いること。というのも劇中の主人公をずっと見守っている見えない存在として、僕のなかに「天使」のイメージがあったんですね。それを音で表現したかった。女の子のソプラノと違って数が少ないんですけど、無理を言って探してもらいました。登場人物たちの感情にしっかりと寄り添いたかったので、ストリングス主体のアレンジにしました。たまたま昨年、弦楽四重奏と共演するツアーを行ったばかりだったので、気心の知れたメンバーに演奏をお願いしています。

    ─主題歌「影踏み」は、哀感あふれるメロディーが印象的なバラードです。この曲にはどのような思いを託しましたか?

    映画の最後を締める楽曲ですから、単なる付け足しではなく、主人公の思いが伝わってくるものにしたかった。最初にイメージしたのは、小さな子供二人が影踏みをして遊んでいるようなノスタルジックな情景でした。そこから、あの旋律とゆったり歩くようなテンポが自然に浮かんできた。映画をご覧になった方が、エンドロールでこの曲を聞いて「あ、だから『影踏み』だったんだ」と思わず納得するような曲になっていれば、僕としては嬉しいですね。

    原作 横山秀夫インタビュー

    ─映画を観て、率直にどんな感想を抱かれましたか?

    異色作の完成を心から喜びました。ノワール(犯罪もの)でありながら、すこぶるハートフルでもある。主演の山崎まさよしさんの存在感、役者としての引力の強さは想像以上で、ぐいぐいと「ノビカベ」が暮らすアンダーグラウンドの世界に引き込まれました。実をいうと「影踏み」は、映像化は難しいだろうと半ば諦めていた作品だったんですよ。泥棒を主人公にしているうえに、物語の主軸に小説でしか描けない、まさかのファンタジー的な設定がある。実際に興味を示してくださった製作者もいましたが、おそらくその二つの点がネックとなり、実現には至らなかった。自作の大半が映像化されるなか、この一作だけポツンと取り残されてみて、これは昨今の映画やドラマには向かない内容なのだと勝手に思い込んでいたわけです。それを見事にクリアしてみせた篠原哲雄監督の手腕に脱帽したというのが、正直な最初の感想です。

    ─映像化にあたり、原作者として何か希望は伝えましたか?

    私からは何も。篠原監督とは「伊参スタジオ映画祭」シナリオ大賞の選考委員で3年ほどご一緒しましたが、今回は「映画は、映画人のものです。原作に囚われずに、映像作品として素晴らしいものをつくってください」と、それだけお願いしました。

    ─とりわけ心に残ったシーン、映像描写を挙げるとすると?

    何より「目」が印象的な映画でしたね。出演者の方々それぞれに、活字に起こすのは困難な、映画ならではの忘れがたい「眼差し」があった。とりわけ主人公の真壁修一を演じた山崎さん。彼が劇中で見せる不敵な眼光や憂いを帯びた眼差しが、正義と不正義が混在する本作の世界観を創っていました。山崎さんは、何気ない世間話をしていても、ふとした瞬間「この人には強固な心棒がある」と感じさせる方です。そういう人柄、持ち味、人生観のようなものまでスクリーンに滲み出ていた気がします。

    ─主人公を取りまく共演者についてはいかがでしょう?

    主人公の“相棒”啓二を演じた北村匠海さんの、ちょっと尖った、それでいて人懐っこい眼差しもすごくよかったですね。「修兄ィ」と呼びかけるときの視線や声のトーンだけで、この青年が修一に対して誰よりも親しみを抱き、二人が切っても切れない仲であることが伝わってくる。何度か撮影現場にお邪魔したとき、お二方のやりとりを見学して「この映画はきっとうまくいく」と確信したのを思い出します。主人公に想いを寄せる久子を演じた尾野真千子さんも素晴らしかった。原作ではあえて古風な女性像を造形していますが、尾野さんは本当に微妙な表情や視線の変化で、久子が抱える複雑な内面事情を表現されていた。滝藤賢一さんや大竹しのぶさんの目力は言わずもがなですが、鬼気迫るものがありましたし、藤野涼子さんの遠い視線もね。そうしたさまざまな感情を湛えた「眼差し」のリレーがあったからこそ、本作のラストシーンは切なく、それでいて開放感に満ち溢れたものになったと思う。エンドロールとともに流れる山崎さんの歌が胸に沁みわたりました。

    ─雑誌連載を経て、2003年に単行本化された本作。警察組織小説を切り拓いてきた横山作品のなかで、犯罪者を主人公に据えた連作短編はこれだけです。そもそもなぜ、このようなクライム・ノベルを執筆しようと?

    小説を書く動機はつねに複合的ですが、あえて言うなら、警察小説とは立ち位置を変えて、地面スレスレの視点から社会を見つめてみたかったということです。これまで私は、おもに警察機構を通じて、「組織と個人」の関係性について描いてきました。その主題を突き詰めていくと、世間というか社会そのものが一つの組織体だという結論にたどり着く。では、「世間」というつかみ所のない組織体をどうすれば小説の中で浮かび上がらせられるか。そう自問した際、位相の転換を思い付いた。要は実社会の組織や業界に属せないアウトローを主人公に据え、組織人とは真逆の目線を獲得することで、当たり前すぎて日頃目に留まらない社会の組織性を可視化できるのではないかと。主人公の真壁は青年期のある事件がきっかけで表の世間に絶望し、裏世界に身を落とします。でも、裏には裏の「世間」があり、一歩そこから踏み出そうとすると、一匹狼であるはずの真壁にも逃れられないしがらみや同調圧力が付きまとうわけです。ノワールとしてのクールさよりもむしろ、ウエットな相克について書きたかった。その意味で「影踏み」は、犯罪者を描いた異色作ではあっても、決してイレギュラーな作品ではなく、私のほかの作品群と地続きの場所にあるんです。

    ─改めて、主人公・真壁修一の人物像について教えてください。

    泥棒を生業にしてはいるが、砕け散った矜持(プライド)の欠片をポケットに忍ばせてもいる。そんなイメージを投影した男です。矜持なくして、人は前向きに生きられません。とはいえ、完全無欠の矜持を守り通して生きていくのもまた難しい。この社会のなかで、普通に経済行為をしながら暮らしていれば、組織人であるかどうかに関わらず、プライドをズタズタにされることもあるでしょう。「影踏み」に限らず、これまで私が書いてきた主人公で、生まれたての無垢なプライドを保っている人物など一人もいません。ただ、だからといって矜持をかなぐり捨てた、何でもアリの人間を書きたいわけじゃない。むしろ傷付いたり割れたりした矜持をこっそり拾い集め、人知れず隠し持って生きているような人間が、やっぱり私は好きなんですね(笑)。私の小説の軸になる「これだけは譲れない」という流儀やルールは、不完全な矜恃が生み出すプリズムの光です。そういった矜持と屈折のせめぎ合いみたいなものを、今回の山崎さんは見事に体現してくださっていました。作品が完成した今となっては、この役は山崎さん以外に考えられません。もっともファンの方々には「まさやんを泥棒にしてしまってすみません」と謝らねばなりませんけれど(笑)。

    ─全編が群馬県でロケーション撮影された本作。昭和の残り香が漂う商店街など、土地の匂いが漂ってくるところも魅力の一つです。本作でスクリーンに写し出された街の印象はいかがでしたか?

    私が長く群馬に住んでいることも大きいと思いますが、今回のオールロケ撮影は視覚的な“通奏低音”として作品世界に統一感をもたらした気がします。一つ一つはありふれた風景でも、それが連続して映し出されることによって、嘘のない地方都市の空気感が伝わってきました。

    ─今回の『影踏み』について、これまで映像化されてきた横山作品とは一味違った魅力やフレッシュさを挙げるとすると、どういう部分でしょう?

    他の作品との比較はできませんが、しっかりとした商業作品でありながら、その方程式から微妙に外れているところが本作のハイライトでしょうか。ストーリーの順序立てや謎解きありきで引っ張っていくエンターテインメントとは少し違って、大切に撮られた一コマ一コマのシーンの積み重ねでできている。だからある意味、「全編が見せ場」の映画なんですね。

    PRODUCTION NOTE

    • 「影踏み」映画化に至るまでの、長い長い伏線 CLICK
    • 伊参スタジオ映画祭で自然に形成された“四角形” CLICK
    • 2016年、控え室の意気投合から一気に盛り上がった企画 CLICK
    • 原作のエッセンスを映画的に膨らませた脚本 CLICK
    • 伊参スタジオを拠点に、群馬県内でオールロケーション撮影 CLICK
    • “月キャベ”の名コンビが創りあげた、まったく新しい魅力 CLICK
    • 新たな境地を拓いた山崎まさよし本人による映画音楽 CLICK

    「影踏み」映画化に至るまでの、長い長い伏線

    絶大な人気を誇る横山秀夫の作品群で、ただ一つだけ映像化されていなかった小説「影踏み」。今回のプロジェクトは2016年、群馬県中之条町で毎年開催されている「伊参スタジオ映画祭」で横山秀夫(原作)、篠原哲雄(監督)、山崎まさよし(主演)の三人が一堂に会したことから動きはじめた。実はこの出会いには、20年以上にわたる長い伏線が存在している。 伊参スタジオが誕生したのは1995年。群馬県が「人口200万人」を記念して製作した小栗康平監督作『眠る男』の撮影拠点・合宿所として、廃校になっていた中之条町の旧第四中学校を改装して作られた。その際、設立のために奔走したのが本作『影踏み』のプロデューサーであり、当時は小栗組の制作主任を務めていた松岡周作(ドラゴンフライエンタテインメント)だ。 『眠る男』完成後、中之条町は劇中で使われたセットや小道具などを保存し、伊参スタジオ公園として公開。あわせてこの場所を、地域における映画作りの拠点として運営していくことを決める。そして、その第一弾として松岡自らがプロデュースしたのが、ほかならぬ篠原哲雄監督の劇場デビュー作『月とキャベツ』(1996年)だった。主演の山崎まさよしにとっても俳優デビュー作となった本作は、山崎が歌う主題歌「One more time, One more chance」のヒットとも相まって、全国でロングランを記録。同時に、映画のロケ地を一目見ようと中之条町を訪れるファンの姿も増えていった。

    伊参スタジオ映画祭で
    自然に形成された“四角形”

    2001年。ファンの熱い思いにも後押しされて、中之条町内外のボランティアスタッフたちが手作りで「伊参スタジオ映画祭」を企画。毎年11月、2日間にわたって開催されるこのイベントでは、体育館に35ミリの映写機を持ち込んで多様な日本映画を上映。さらに、毎年必ず『月とキャベツ』をフィルムで上映するのが習わしになっている。また2003年からは、全国から公募した「伊参スタジオ映画祭シナリオ大賞」を創設。初年度から審査員を務める篠原監督、松岡プロデューサーに加えて、2013年〜15年には地元・群馬出身の小説家として横山秀夫も参加し、応募作について熱い議論を繰り広げていた。 このように「伊参スタジオ映画祭」という場を起点として篠原監督、松岡プロデューサー、山崎まさよし、横山秀夫という四角形が自然と形成され、今回の『影踏み』映画化への布石が打たれていたと言っていい。

    2016年、控え室の意気投合から一気に盛り上がった企画

    前述のとおり、直接のきっかけになったのは2016年の第16回「伊参スタジオ映画祭」だった。この年、『月とキャベツ』の公開20周年を記念して上映後にミニコンサートを行った山崎まさよしと、同日に上映された『64 -ロクヨン-』(2016年、瀬々敬久監督)の原作者として登壇した横山秀夫は、控え室で初対面。実は横山作品の大ファンで全作を読破していた山崎と、かねて『月とキャベツ』を通して山崎の歌に心惹かれていた横山は、挨拶もそこそこに意気投合。会話が盛り上がり、「篠原哲雄監督と山崎まさよしの“月キャベ”コンビで、横山秀夫原作を映画化しよう」というプランが瞬く間に固まった。 そして数か月後。横山側が正式に「影踏み」のタイトルを提示。祥伝社「小説NON」に連載され、2003年に単行本化された本作は、警察小説の名手として知られる横山が唯一「ノビ師」と呼ばれる凄腕の窃盗犯を描いた連作短編だ。主人公が犯罪者であるうえ、アイデアの根幹にある“小説ならでは”の仕掛けがあるため、長く「映像化は不可能」とされていた異色作。だが横山は、それも十分承知したうえで「本心から納得しないと頷かない山崎さんは、内面に反骨のかなめ石を抱く主人公のイメージにぴったり」とも確信していた。

    原作のエッセンスを
    映画的に膨らませた脚本

    これを受けた松岡プロデューサーは、長く仕事を共にしてきた旧知の脚本家・菅野友恵と相談。小説「影踏み」の根幹にあるエッセンスを保ちつつ、幅広い観客が楽しめる“映画ならでは”の見せ方を案出。このプランを横山が快諾し、2017年12月、いよいよ具体的な脚本開発がスタートする。 「原作にある魅力的なエピソードを選りすぐって、2時間のドラマにまとめていきました。強く意識したのはオリジナルにあるクライム・サスペンス要素を生かしつつ、ヒューマン・ドラマとしての魅力も際立たせること。具体的には主人公・真壁修一と恋人・久子の微妙な関係にフォーカスし、そこをじっくり味わってもらう工夫をこらしています」(松岡プロデューサー談) 脚本のブラッシュアップ作業には篠原監督も合流。演出家としての視点から、主人公の行動原理やモチベーションがよりリアリティをもって伝わるように、さまざまな修正やシーン追加を行った。並行してロケハンやキャスティングが進むなか、何度かの改稿を経た2018年5月、最終的に脚本が完成した。

    伊参スタジオを拠点に、群馬県内でオールロケーション撮影

    クランクインは、脚本完成から間もない2018年5月20日。そこから約3週間、群馬県内でオールロケーション撮影が行われた。もちろん拠点となったのは、今回も中之条町の伊参スタジオだ。スタッフはそこで合宿生活をしつつ、ロケバスで各地に移動。たとえば、主人公・修一と“相棒”の啓二が散策する古びた商店街は前橋市。恋人・久子の住むアパートや、勤め先の保育園は伊勢崎市。修一の隠れ場所である旅館(外観)や、事件の鍵を握る女性・葉子のスナックは高崎市で撮影され、地方色あふれる風景でスクリーンを彩った。

    “月キャベ”の名コンビが
    創りあげた、まったく新しい魅力

    『8月のクリスマス』(2005年、長崎俊一監督)以来、実に14年ぶりの映画主演となった山崎まさよし。篠原監督とは気心の知れた盟友だが、撮影になると決して馴れ合いにはならない。むしろ「独特の距離感を感じさせる関係性がはたで見ていて面白い」と松岡プロデューサーと振り返って笑う。 「山崎さんは、自分がプロの役者でないことをよく知っている。だから基本は共演者とのやりとりに身を委ねつつ、『修一は一体、どういう人物なのか?』という問いについてすごく深く考えていたと思います。そういう山崎さんを、篠原監督はあえて放置するんですね(笑)。その結果、真壁修一という完全に別人格の登場人物に、山崎さん自身が持っている骨太さやチャーミングさが、だんだん重なって見えてくる。シノさん(篠原監督)とは長い付き合いですが、ある人物が他者や世界に対して抱いている距離感を映像に置き換えるのが本当にうまい。今回の『影踏み』でも、“月キャベ”とはまた違った方向ですが、二人の資質が作品に命を吹き込んでくれた気がしています」(松岡プロデューサー談) また『月とキャベツ』でヒロインを演じた女優・真田麻垂美によるカメオ出演(導入部の図書館のシーン)や同作で重要な役を演じた鶴見辰吾との再共演も、ファンにとっては嬉しい“サプライズ”と言えるだろう。

    新たな境地を拓いた山崎まさよし本人による映画音楽

    また今回、山崎が主題歌のミディアムバラード「影踏み」に加えて、劇中の音楽を手がけたのも話題だ。「登場人物の感情にしっかりと寄り添うため」、弦楽カルテットによるアンサンブルを起用。ラッシュ映像を何度も見返しながら、自らアレンジを書き下ろした。その際、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという楽器の音を主要キャラクターの声に当てはめ、シーンによって使い分けるなど、繊細な工夫も凝らされている。 仕上がってきた楽曲を耳にした篠原監督と松岡プロデューサーは、「これだけ感情を喚起する音楽が付けば、もっと突っ込んだ表現ができる」と、何か所か編集を変えたところもあったという。ときに緊迫感を高め、ときに切ない情感を訴える音楽と、日本映画を代表する演技派たちのアンサンブル─。この二つのせめぎ合いも、本作の大きな魅力となった。